三村明夫さん(日本製鉄(株)名誉会長)
- 井下 泰伸
- 1月30日
- 読了時間: 5分
次代へつなぐメッセージ ~三村明夫さん(日本製鉄(株)名誉会長)~
投票率の低下や政治への関心の薄れは大きな社会問題です。群馬県議会では、特に若者に関心が高いとされるSNSによる議会情報の発信や、GACHi高校生×県議会議員・シチズンシップアカデミーなどの高校生や大学生と対話する事業などを通じて、若者の政治への関心を高めてもらうための取り組みを実施しています。
この活動の一環として、井下泰伸議長が、群馬県にゆかりのある著名な方と対談し、若者の皆さんへ「次代へつなぐメッセージ」をいただきましたので、お届けします。
第5回は、三村明夫さんです。
【三村明夫さんからのメッセージ】
〇群馬県との縁
前橋市で生まれ、県立前橋高校卒業まで群馬で過ごしました。通学途中に見た赤城山をよく覚えています。年をとるにつれて故郷への愛情が増します。群馬にいる人々との交流は続いていて、群大附属中の同窓会に出たり、誘われて伊香保温泉へ行ったり、群馬へ講演に行けば大勢集まってくれます。ありがたいことです。群馬から何か頼まれることも多いです。全部は受けられませんが、頼まれることは嬉しいです。
〇生きるのに必死だった大学時代
生きるのに必死で、学費や生活費をアルバイトで稼ぎました。旅行や飲み会にはほとんど行けず、家庭教師先でいただく夕食が楽しみでした。3年生から奨学金を受けて賄い付きの寮に入れて、人間らしい生活になりました。勉強はきちんとやって、中学時代からやっているバレーボール部はレギュラーでした。勉強、アルバイト、バレーボールに明け暮れた4年間で、達成感はありました。
〇就職は「日本を豊かにする産業」として鉄鋼業界へ!業界再編の渦中で過ごす
就職は、日本を豊かにする産業がいい、それは重工業だと考えていて、大学の講義で見学した製鉄の様子に感じ入って鉄鋼業界に決めました。1番の会社を抜いてやるには2番がいいと考えて、業界2番の富士製鐵(現在の日本製鉄)へ入社しました。
特に印象に残っているのはプラザ合意後の円高の影響で合理化の必要に迫られたことです。「聖域なき合理化」として高炉の削減や大規模な人員整理の事務方として奮闘しました。合理化は長期間かかりますので、社長就任後も取り組みました。その中で学んだ重要な教訓は、「安全対策と品質維持は聖域で合理化すべきではない」「合併や業界再編の後にポストマージャーインテグレーション(各分野の統合プロセス)までしっかりやらないと計画されたシナジー(相乗効果)が得られずに失敗する」ということでした。
経営者には、喜びも苦しみもありますが、一生かけて取り組むに値します。プロジェクトをチームで成し遂げた時の喜びは、経営者が一番大きいと思います。
〇日本商工会議所会頭として中小企業問題に取り組む
日本商工会議所の会頭として中小企業の現実に向き合いました。日本の産業基盤は中小企業が支えています。大企業と中小企業の関係を公正で持続可能なものにすることが必要です。具体的には、取引価格の適正化、価格転嫁の仕組みなどが重要です。最低賃金の引き上げは、労働分配率(企業が生んだ付加価値に占める人件費の割合)が大企業より高いという中小企業の現実を無視すれば実現できません。実質的な労働生産性が伸びても、取引単価の上昇で付加価値を吸収されれば賃金は上げられません。大企業側もサプライチェーン全体の持続可能性を自覚して、技術革新のメリットや物価高騰を適切にシェアすることが求められます。
〇少子化対策は成長戦略
今は、未来を選択する会議議長として、少子化対策に取り組んでいます。人口減少は、生活の維持や地域の存続に直結する重大課題です。2100年には日本の人口は6300万人に減るといわれています。もっと危機感を持たなければなりません。このまま放置すれば消費需要も生産年齢人口も減り、高齢化率が上昇し、社会保障や地域サービスの維持が困難になります。
対策の第一は、出生率を上げて人口減少のスピードを緩める取り組み(子育て支援の充実、働き方改革など)の推進。第二に、少ない人口でも社会の活力を保つために生産性の向上(デジタル化や業務効率化など)です。人口減少対策は、成長戦略そのものです。小さなことから一つ一つ取り組まなければなりません。
政府が人口戦略本部を立ち上げましたが、11月の第1回の後、第2回が未定。早く開催して対策を進めるよう、地方からも働きかけてほしいです。社会へのアピールにも繋がります。
〇若者へのメッセージ
今の世代には「将来に希望が持てない」と感じる若者が少なくありません。我々大人や政府、企業、みんなの責任ですが、若者自身も、どうすればより良い未来になるのか考え、自分のできる範囲でできることに取り組んでほしいです。
日本ユースリーダー協会の若者力大賞や、日本商工会議所青年部や日本青年会議所の活動を見ると、社会に役立つ活動に熱心に取り組む素晴らしい若者も大勢いて、嬉しくなります。ぜひこれからも頑張ってほしいです。
目の前の丘に登れば、広い世界が見えます。その先にまた丘が見えて登ってみると、さらに広い世界が見える。Steve Jobsがスタンフォード大学でスピーチした「Connecting the Dots(点と点がつながる)」にも通じます。完璧を目指すよりも、まず動いて学び、改善を続けることが大切だと思います。




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